DR-DOSによるDOS/V環境の構築

本稿は、技術評論社のSoftware Design誌98年6月号に寄稿した記事を元にしています。 基本的にDR-DOS 7.02について記述していますが、 7.03のリリースやその後の状況の変化を踏まえて一部加筆訂正した部分があります。

最終更新: 2000.2.2


復活のDR-DOS

Lineo DR-DOSという「フリーで使用できるDOS」があるのをご存じでしょうか? 本稿では、このDR-DOSと各種フリーソフトを使って、 なるべくフリーな日本語DOS/V環境を実現する試みを紹介します。

DR-DOSとは、Lineo, Inc.が提供しているMS-DOS互換OSで、 評価または非営利目的であれば無料で入手・使用できる点が大きな特徴です。 そのルーツは、かの老舗Digital Researchが数年前に開発・販売していたDR-DOS 5.0/6.0です。 日本語版(DR-DOS 6.0/V)も販売されていましたので、ご存じの方も多いと思います。 その後同社がNovellに買収されたのに伴い、Novell DOS 7と名を改めました。 さらに、NovellからスピンアウトしたCalderaがこれを引き継ぎ、 OpenDOS 7.01という名前で「フリーでダウンロードして使用できるDOS」として再デビューしました。 7.02からはDR-DOSという昔の名前に戻っています。 さらに、Calderaの子会社Caldera Thin Clients, Inc.に移管され、 同社はLineo, Inc.と名称変更して現在に至ります。

商品としてのDR-DOSはOEM向けの製品ですが、 我々一般ユーザーはLineoのWWW/FTPサイトでDR-DOSを入手することができます。 単にフリーであるというだけでなく、 旧DR-DOS以来のマルチタスクサポートや、 NetWareクライアントとPersonal NetWareのバンドルなど、 機能の面でも意欲的な製品です。

さて、このように魅力的なDR-DOSですが、残念ながら日本語化されてはいません。 しかし,英語版のDOSにソフトウェアを追加して日本語環境を実現する、 すなわち「DOS/V化」するのは原理的には難しいことではありません。 DR-DOSも、各種フリーソフトを利用することで日本語DOS/V化することができます。


DOSの存在意義

本題に入るまえに、なぜ今どきDOSをとりあげるのかを考えてみましょう。 ご存じの通り、すでにDOSはPCの主流OSの座をWindowsに譲っています。 しかしながら、まだまだDOSの出番はなくなりません。

たとえば、BIOSのアップデートやISAカードの設定を行うユーティリティは、 そのほとんどがDOS上で動作するようにできています。 ハードやソフトの障害が発生してOSが起動しなくなったときも、 DOSは非常用としてたいへん重宝します。 また、PCベースの携帯端末などでは、DOSを採用しているものが今でも数多くあります。 このように、DOSはPCの主役OSではなくなったものの、基盤OSとして依然健在です。

さらに、PC UNIX上のDOSエミュレータとしてdosemuやpcemuといったものがありますが、 これらを利用するにもDOSそのものが必要です。

ところで、従来のDOS(PC DOS、MS-DOS)は売り物であり、基本的に別途購入する必要がありました。 たとえば、PC UNIXをメインにフリーなシステムを構築しようとしても、 DOSだけは買わなくてはいけませんでした。 しかし、DR-DOSの登場により、ついにDOSまでもフリーで使える時代になったのです。 PCの基盤OSであるDOSが万人に開放されたといっても過言ではないでしょう。


DOS/V環境構築計画

英語DOSをベースにしてDOS/V環境を構築するには、 フォント・フォントドライバ・ディスプレイドライバなどのソフトウェアを追加することになります。 これらは、もちろんPC DOS/VやMS-DOS/Vのものを流用しても可能ですが、 せっかくフリーなDR-DOSを使うのですから、 追加ソフトもできる限りフリーで揃えることに挑戦したいものです。

具体的には以下のようなソフトウェアが必要となります。

ここで紹介したソフトウェアの多くは、WWWやFTPで入手可能です。 稿末にリンク集を設けてあります。


DR-DOSの入手とインストール

Lineoの WWWサイト/ FTPサイト から、以下のパッケージを入手できます。

単に全ファイルをアーカイブしたものと、 フロッピーディスク(FD)イメージになっているものと、 2通りの形態で提供されています。 HDD・MO・CD-Rなどに展開してインストールする場合は前者、 全部FDでインストールする場合は後者を入手します。 また、7.02のLiteは、フルセットからネットワーク機能 (NetWareクライアント・PersonalNetWare)を除いたものです。 すべてPKZIPの自己展開ファイルの形で配布されているので、 DOSやWindowsでは直接実行すれば展開できます。

なお、入手の際は使用許諾書(英文)を必ず読み、その内容に同意してください。 フリー(ライセンス料未払い)で使用する場合は主に以下のようになります(Part I、III)。

「合理的な期間」というのが気になりますが、 ある方が以前メールで問い合わせたところでは、 事実上無期限とみなしてよいとのことです。

また、ライセンスを購入したい場合は、 Calderaの代理店である秋葉原のAmuletCOMでCD-ROMを販売しています。 このCD-ROMはブート可能CDになっています。

無事入手できたらいよいよインストールです。 インストール自体は特に難しいところはありません。 しかし、他のOSと共存させたい場合は注意が必要です。 後述の「他のOSとの共存」の項を見てください。

アーカイブ版を入手した場合は、HDD・MOなど適当なメディアに展開して、 DOSまたはWin95のMS-DOSモードを起動し、インストーラー(INSTALL.EXE)を起動します。 日本語モードでインストーラーを起動すると画面が正しく表示されないので、 あらかじめ英語モードにしておきましょう。 また、マウスドライバを組み込んでからインストーラーを起動すると、 マウスで操作することができて便利です。

FDイメージ版を入手した場合は、まず適当なメディアに展開します。 そして, DOSやWin95などが使える場合は、 付属のMAKEDISK.EXEまたはDISKCOPY.COMでインストールFDを作成します。 UNIXの場合は、ddコマンドでイメージファイルを直接FDに書き込みます。 あらかじめ空きFD(フルセットは5枚、Liteは3枚)を用意しておいてください。 その後、1枚目のFDを使ってPCを起動し、インストーラーの指示に従います。 マウスで操作するには、Alt+Xでいったんインストーラーを終了して、 マウスドライバを組み込んでから再度インストーラーを実行します。

インストールでは、いろいろなモジュールを選択したり、設定を調整したりできますが、 最初はデフォルトのままとりあえず入れてみるだけで十分でしょう。 インストールが終わったら再起動して、ちゃんと動作することを確認しましょう。 また、インストール後も、SETUPコマンドを使って、 モジュールを追加したり、設定を変更したりできます。


他のOSとの共存

AT互換機のアーキテクチャでは、複数のOSをインストールすることはあまり考慮されていないので、 うかつにOSをインストールすると今までのOSが起動しなくなるおそれがあります。 他のOSと共存させたい場合は、事前によく検討しなくてはいけません。

他のDOSとの共存

すでに他のDOSがインストールされている場合、 普通にDR-DOSをインストールすると前のDOSは起動できなくなります (UNINSTALコマンドで DR-DOSをアンインストールすれば元に戻ります)。 ここでは、DR-DOSとPC DOS(MS-DOS)でドライブ名の割り当て規則が違うことを利用して、 DR-DOS とPC DOS を共存させるインストール手順を紹介します。

  1. DR-DOSのFDISKを拡張モード(FDISK /X)で起動し、 基本パーティションを2つ作ります。 必要なら拡張パーティションも作ります。
  2. 最初の基本パーティションをアクティブにし、そこにDR-DOSをインストールします。
  3. 2番目の基本パーティションをアクティブにし、そこにPC DOSをインストールします。
  4. 適当なブートセレクター(booteasyなど)をインストールし、 DR-DOSとPCDOSを選択ブートします。

DR-DOSとPC DOSを逆にすると動作しません。 また、DR-DOSとPC DOSとでドライブ名が違うことに注意が必要です。

Win95との共存

Win95がインストールされているマシンにDR-DOSをインストールすると、 自動的にDR-DOSのOSローダー(LOADER.COM)がインストールされ、 起動時にDR-DOSとWin95を選択ブートできるようになります。 このOSローダーは、マスターブートレコード(MBR)を占有するタイプなので、 同種の他のブートセレクター(lilo、booteasyなど)とは共存できません。

このとき、DR-DOSのCONFIG.SYSAUTOEXEC.BATは、 Win95の同名ファイルとの衝突を避けるため、 DCONFIG.SYSAUTODOS7.BATというファイル名になります。 もしWin95のCONFIG.SYSAUTOEXEC.BATが消えてしまった場合は、 アンインストール用の@CONFIG.UI@AUTOEXE.UI(共に隠しファイル)からコピーすれば復元できます。

なお、Win95だけでなくDOSもインストールされている場合、 DR-DOSをインストールすると、前のDOSは起動しなくなります。

NTとの共存

NTがFATの基本パーティションにインストールされている場合、 そこにDR-DOSをインストールすると、 Win95の場合と同様にDR-DOSのOSローダーがインストールされます (インストール中にいったんエラーで止まりますが、続行してかまいません)。

NTがNTFSの基本パーティションにインストールされている場合は、 別途基本パーティションを確保してDR-DOSをインストールします。

NTが拡張パーティションにインストールされている場合は、 基本パーティションにDOSやWin95がインストールされていると思いますので、 DOSやWin95の項を参照してください。

Linux、FreeBSDなどとの共存

これらのOSはDOSと干渉しないので、ほとんど問題ありません。 DR-DOSのための基本パーティションを確保してインストールし、 liloやbooteasyで切り替えればよいでしょう。

FD起動

HDDへのインストールがためらわれる場合は、 DR-DOS起動用FDを作ってそこから起動するのも手です。 これなら、HDD上のOSには影響しません。 ただし、DOS関係のファイルをすべてFDに置いて運用するのは、 速度や容量の点で不満が残るので、必要最低限のファイルだけをFDに置き、 残りはHDDに置いて呼び出すように工夫するとよいでしょう。


DOS/V環境構築の手順

DR-DOSのインストールが終了し、英語DOSとして正しく動くことを確認したら、 いよいよDOS/V化、すなわち各種ドライバ等のインストールにとりかかります。 詳しくは各ソフトのドキュメントに譲りますが、ここで簡単に手順を紹介します。

なお、フォントとフォントドライバはC:\FONTXに、 ディスプレイドライバはC:\DISPVに、 それ以外の実行ファイルはC:\BINに置くものとします。

完了したら再起動します。 うまくいけば、ディスプレイドライバの組み込み時に画面が切り替わり、 日本語が表示可能になるはずです。 DOS/Vアプリケーションを動かしたり、 CHEJやRCHEVでのモード切り替えを試したりしてみてください。

ビデオカードによっては、スクロールが正常に行われないことがあります。 その場合は、DISPVに/HS=OFFをつけます。

その他、EMM386の設定や、CD-ROMデバイスドライバの組み込み、 ディスクキャッシュNWCACHEの組み込みなど、必要に応じて書き換えます。


使用感

DR-DOS/Vを使っていて気がついたことをまとめてみました。


おわりに

本稿が、フリーなシステム構築をめざす方や、 携帯端末でDR-DOS/Vを使おうと考えている方の参考になれば幸いです。

最後になりますが、本稿で紹介した各ソフトウェアの作者の方々と、 DR-DOSのDOS/V化に関して筆者に感想や情報をお寄せくださった方々に、 この場を借りてお礼申し上げます。


リンク集

ベンダー等のページ

Lineo DR-DOS

Amulet info

Calderaの正規代理店としてDR-DOSやOpenLinuxを販売しているAmuletCOMのページ。DR-DOSのCD-ROMは¥4,800とのことです。

FreeDOS Project

FreeDOSのページ。

PTS-DOS

ロシアのソフトハウスが開発・販売している互換DOS。

Datalight ROM-DOS

組み込み用の互換DOS。

SuperDOS

トランザクションサーバー用のマルチタスク・マルチユーザーDOS?

TSX-32 Operating System

REAL/32

Arachne WWW browser homepage

DOS用WWWブラウザ。

個人のページ

Lepton's DOS/V Programs

FONTX/DISPVなどの作者、lepton氏のページです。

OpenDOSで遊ぼう!

本稿と同様、OpenDOSとフリーソフトを使ったDOS/V環境構築について、 日記風に書かれています。 ディスプレイドライバの比較や、go32の動作報告もあります。

それでもDOS!

DOS環境を充実させるためのtipsや、OpenDOS/FreeDOSの紹介などがあります。 DR-DOSメーリングリストの案内もあります。

DR-DOSをマルチタスクで使おう!!

DR-DOSのマルチタスク機能(タスクマネージャ)と日本語環境を共存させる方法が解説されています。

DOSの歴史セミナ

86-DOSからOpenDOS/FreeDOSに至るまでのDOSの足跡を記したページ。 たいへん参考になります。

ソフトウェア

FONTX/DISPV

V-Textドライバの代名詞とでもいうべきFONTXとDISPVです。

16/19ドット半角フォントデータ

この企画のために用意したフォントデータです。 英数字とカタカナは既存のものを利用し、 不足する特殊記号については筆者がデザインしました。

フォントデータ

Free Data for Windows CE

10ドット日本語フォント「ナガ10」をFONTX2形式に変換したものです。

V-Text関連ユーティリティ

フォント変換ユーティリティ

日本語/英語モード切り替え関連

JIS_A01

106キーボード専用のコンパクトなドライバです。 NIFTY SERVEのFPCUPRO LIB6 #534にあります。

プリンタドライバ

WXP

フリーで実用的な日本語FEPとして有名なWXPです。

フリーソフト群

WXPをDOS/Vで動作させるWXPDOSVの他、フォントドライバなどがあります。

Logitech MouseWare

LogitechのDOS/Win3.1用マウスドライバです。

マウスドライバ

Simtelのマウスドライバ/ツール群です。 ベンダー提供のマウスドライバが多いですが、 フリーなシリアルマウスドライバCute Mouseもあります。

LP-Project

DOS/V用のいろいろなツールがあります。KKCFUNC.SYS互換ドライバもあります。

V-Text関係のプログラムやフォントは、 すでにHISTORY PACKに移っているものが結構ありますので、 PACK for WIN GOLDのCD-ROMを持っているからといって油断しないようにしましょう:-)

その他

NiftyServe FPCUPRO MES 3「DOS/V, DR DOSの部屋」
NiftyServe FNWUSER MES 6「Personal NetWare/NetWare Lite」
NiftyServe FNWUSER MES 13「AT互換機,DR-DOS」

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